卒業記念舞踏会の夜、王太子レオルドは婚約者リリアーナを人前で断罪した。
「地味で暗く、王妃に相応しくない」
五年間、ただ静かに傍に立ち続けた侯爵令嬢は、反論一つせず婚約破棄を受け入れ、故郷へ帰った。
――だがその翌日から、王都が壊れ始める。
魔道具が動かなくなり、作物が育たず、原因不明の体調不良が広まる。
やがて宮廷魔術師が真実を突き止めた。
リリアーナは、数百年に一人しか生まれない"浄界の聖女"。
彼女がいた五年間、王都の結界は彼女の力によって守られていた。
誰も気づかないまま、ただの役立たずと呼ばれていた少女が、一人で国を支えていたのだ。
「すぐ連れ戻せ!」
王太子は青ざめて命じるが、当のリリアーナは辺境で薬草を摘み、子供たちに囲まれ、初めての笑顔を取り戻していた。
そして辺境を守る無骨な辺境伯アルヴェインだけが、誰より早く彼女の存在の価値に気づいていた。
「あなたはいったい、何者だ」
王太子が自ら辺境を訪れ、涙ながらに懇願する。
それでも彼女は静かに、しかしはっきりと告げる。
「もう遅いのです」
役立たずと切り捨てられた少女が、自分の居場所と、愛してくれる人を見つける物語。
国家崩壊の危機と、遅すぎた後悔と、揺るがない幸福の話。