かつて世界を恐怖に陥れた魔王がいた。
魔王が率いる不死の軍団に対し、人類はその生存圏を徐々に失っていった。滅亡の足音が聞こえるほどに人々は窮地に追い込まれたが、その状況を勇者と4人の仲間たちが救う。
彼らは死闘の末、魔王を封印することに成功した。そして世界に平和がもたらされたのだった。
そして勇者たちの活躍が絵物語の中の出来事と認識されるようになるほどの時が流れた。
ある辺境の村に住む少女、レジーナは、毎日のお勤めを果たすために森の奥にある洞窟に向かって歩いていた。
その洞窟には人間とモンスターを融合させたような異形の像が設置されていた。
それが何かを彼女は知らない。ただ村の風習に従っているだけであり、それが何かを考えることなどしなかった。
薄暗い洞窟の中でひっそりとたたずむ像の周囲に広がるぼんやりとした光が、わずかに明滅する。
「ウィル。そろそろあの小うるさい小娘が来るのう」
洞窟に響く少し楽し気なその声に、答える者はいなかった。