「悪役令嬢」として断罪されるはずだった公爵令嬢リリアナ・ド・ヴァルフォードには、前世で弁護士だった記憶がある。
感情と噂と“正しそうな言葉”で組み立てられた裁きに、彼女は復讐も激情も選ばない。ただ一つ、「その根拠は、どこにあるのか」と問い続けた。
証言、神託、要約された記録。
正義の顔をしたそれらは、簡単に切り貼りされ、人を断罪する道具になる。リリアナは証言に頼らず、記録と手続きの矛盾を積み上げ、裁きそのものの運用を崩していく。
やがて舞台は貴族の外へ、さらに軍へと広がる。
守られない被告、速すぎる裁き、消える原本。
敵は個人ではなく、会計・徴税・軍をまたぐ「運用者」だった。
王太子付顧問として正式な席を得たリリアナは、前に出ない。
誰も断罪しない代わりに、同じ手が二度と使えないよう、逃げ道だけを塞ぐ。
派手な勝利はない。
だが、裁きは確実に変わっていく。
次に来るのは、もっと静かな裁き。
机の上には、また一枚、紙が増える。
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