神奈川県某市に住む三十歳の独身サラリーマン、真田琢磨。趣味はゲームと戦国史、近代兵器の鑑賞。自分の好きなことには徹底的に凝る性格の、どこにでもいる平凡な男だ。
今年リリースされた戦国シミュレーションゲーム『覇道戦国』に出会った琢磨は、たちまちその世界に没頭した。オフラインモードの改造MODを駆使し、伊豆七島をモデルとした架空の島嶼国家「鳳凰寺七島」を本拠地とするオリジナル武将——鳳凰寺家当主・鳳凰寺時貞、御年十二歳——を作り上げる。
鳳凰寺家は戦国時代でありながら二十一世紀の軍事力、医療技術、情報通信技術を完備した異次元の勢力だ。陸海空三軍、核兵器、多目的軍事衛星群。そして鳳凰寺家の頭脳とも呼ぶべき量子コンピューターAIシステム「天元」。甲冑を着ない軍人たちが忠誠を誓い、島の民は二十一世紀と変わらぬ暮らしを送る——まさに戦国時代の常識を根底から覆す、圧倒的な国家だった。
連休最終日、ゲームに熱中していた琢磨を突然の巨大地震が襲う。倒れてきた棚に頭を打ち、視界が暗転した——次に目を覚ました時、琢磨は自分が作り上げたキャラクター、鳳凰寺時貞として本物の戦国時代に放り込まれていた。
三十歳の記憶と知識を持ったまま、十二歳の身体で異世界に立つ琢磨。配下を使って情報を集めると、織田信長が桶狭間で今川義元を討ち取ったばかりだと判明する。永禄三年——歴史が大きく動き始めた、まさにその瞬間だった。
戦国の歴史を熟知し、近代兵器を愛し、世界史の流れを知る男は、静かに決断する。
鳳凰寺家は日本を統一する。そしてその先——西洋列強が世界を蹂躙する前に、日本人が世界の覇権を手にする。
畿内や関東の争いには不干渉を貫き、まず京から最も遠い九州の統一を目指す。琉球・台湾の領土化、北海道・北方四島の確保、アリューシャン列島を経てアラスカへ——石油・天然ガス・鉱物資源が眠る北太平洋の弧を丸ごと手中に収める、壮大な百年計画が動き始めた。
歴史の流れを知る男が、最強の駒を持って戦国の盤面に降り立った。信長が、秀吉が、家康が中央で消耗し合う間——鳳凰寺家は静かに、しかし確実に、歴史を塗り替えていく………
※本作は架空の戦国転生小説です。実在の歴史人物・地名・民族等が登場しますが、すべてフィクションとしての描写です。