『雪の妖精』『ハイドランド王国の至宝』と謳われてきた王女オーレリアの評価は、一年前に起こった内乱を機に一変した。
美しいだけ、贅沢と我がまま三昧の無能王女、内乱の陰の首謀者と評され、国中から嫌われることとなったオーレリアに来た縁談は、北海の蛮族の若き覇者、兄殺し、血塗王の異名を持つストゥルツから。
獣の毛皮をそのまま身にまとって土中に住まい、近海を通りかかる船を襲って生きる貧しいヴォーバリアの民。その王たる彼が当初望んでいたのは、しかもオーレリアではなく、オーレリアの憧れと嫉妬の対象である異母妹だった。
血を分けた兄弟でありながら憎み合う兄に、そのヴォーバリアに行くよう命じられ、オーレリアは世間を欺くために身につけた仮面を脱ぎ捨てる。
「全部嫌がらせだもの。何がなくたって私が美しいことは変わらない。私自身は何一つ必要としていないのに、みんな馬鹿みたいに私にはあれが似合うこれが似合うとか言う、それを放っておいただけ。嫌なら止めればよかったのよ――しなかったでしょう? 『美しいお姫さまだからそんなものだ、仕方がない』って勝手に納得して、内心で私を見下げて満足していたくせに。だから民もお兄さまもソフィーナも困ればいいと思った、それだけ」
「……ならばなおのこと、ヴォーバリアに行きなさい」
「厄介払いということ――上等だわ。このお話、お受けいたします」
すべては、生きた人形としてオーレリアを愚かな父に差し出し続けてきた兄と、外見だけを見て人を好き勝手に噂してきたハイドランド国民への復讐のため――。
故国を滅ぼすべく、まずストゥルツを操り、陥れようと試みるオーレリアだったが、当の彼は想定外の反応ばかり。
彼はどうもオーレリアと会ったことがあるようで、勝手な幻想を押し付けてくることもなければ、自由を奪うこともなく……。
「できないならできるようになっていけばいい。オーレリアにはオーレリアだからできることがある」
大事に想う人たちとの繋がりも、勉強も努力も、好きな物も事も、何もかも奪われた。
何も知らない、何もできない、事実性悪で傲慢――そうと知ってなお信じてくれる人たちのために、私にできることってなんだろう。
※本作には別作「冴えない王女の格差婚事情」のネタバレが含まれています。
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