エレオノーラは泣かなかった。
王太子の声が大広間に響き、聖女候補の涙に人々の視線が集まり、誰もが彼女を悪役令嬢として見ようとしていた。けれど、彼女の家族だけは、その場に作られた物語を信じなかった。
娘を疑わなかった公爵家。
噂ではなく、沈黙の奥にある誇りを見抜いた北方大公。
王太子が捨てたものの価値に気づくより早く、エレオノーラは自分を信じる手を取り、奪われた名誉を静かに取り戻していく。
◇◇◇
王太子妃になるために育てられた少女が、家族の期待や役目を背負いながら、自分の心を少しずつ見失っていくところから始まる物語です。
序盤は、主人公の幼少期と教育、家族との関係、そして婚約へ至るまでをじっくり描きます。
すぐに恋愛や婚約破棄へ進む作品ではありませんが、そのぶん、彼女が何を失い、何を取り戻していくのかを丁寧に描いていきます。