ゆっくりと始まった片想いは突然、ひょんなことから大きく動き出す——。
私立女子校に通う琴音は、隣の男子校・海鳴高校の男子へ想いを伝える勇気を出すために、お店で友人たちに初恋のことを打ち明けた。
「彼は海鳴高校二年二組、剣道部のタナカイチロー君です」
「ん? 俺がなんですか?」
声がした方向に顔を上げたら、衝撃的なことに初恋の彼が立っていた。
慌てながらもチャンスだと勇気を振り絞り、連絡先を入手することに成功。ここから少しずつ親しくなろうと意気込むも、またしてもこの恋は急展開。
「これって仲良くなったら付き合いたい的なことですか?」
「そういうことでお願いします」
「そういうことって言うならその、あの、間は飛ばして……付き合って下さい」
都合の良すぎる展開に、琴音の頭上にハテナが飛び交う。
学園もののドラマや漫画で男子が『可愛い彼女が欲しいー』と言うのは定番なので、自分は彼に可愛い女子という評価をつけてもらえたと結論づける。
こうして、まだ話したことのない初恋の人との交際がスタートした。
どうやらこの恋の急展開には理由があり、田中一朗には秘密があるようで……。
さらに二人の恋は歯車となり、他の運命——別の恋や友情も次々と動かしていく。