「戦えない奴に予算は出せない」——魔王討伐から三ヶ月、帰還者討伐機構は俺をそう切り捨てた。
俺、真田幸雄・38歳。異世界での仕事は飯炊きだ。剣も魔法もからっきしだが、勇者部隊千人を十年間、ただの一度も飢えさせなかった。それだけが俺の誇りだ。
退職金代わりの中古キッチンカーで、ダンジョン災害以来さびれた駅前に炊き出し屋台を開く。異世界仕込みの魔物肉の下処理、魔草の毒抜き、疲れた身体の芯まで沁みる野戦スープ。
「……なんだこれ。うまい」
気づけば深夜の屋台には、傷だらけの探索者、行き場のない被災者、そして——機構の現場職員までが列を作っていた。
一方その頃、俺を切ったエリート討伐部隊は、遠征のたびに謎の食中毒と補給の崩壊を繰り返していた。十年間、誰が飯と兵站を回していたのか。あいつらはまだ知らない。
これは戦えない帰還者が、一杯の飯で人と街を立て直していく話。
※全30話・毎日更新・6日目に完結済み表示予定。