「どうして毒親から逃げられないの?」
「ホントは甘えてるだけじゃない?」
隣の山下のおばさんは、いつも美織を褒めてくれる。
「美織ちゃんは本当に親孝行ね」
母の愚痴を何時間も聞き、山のように届くメールやLINEに即座に返信する。
母に愛されたい美織は、少しずつ自分の人生を失っていく。
母は可哀想な人なのだ。
祖母と父が悪いのだ。
だから、私がそばにいてあげなければ。
高校時代、親友の牧子と千花とともに「毒親同盟」を作った美織。
それなのに、自分の母親を毒親だとは認められない。
牧子は東京へ行き、千花もまた新しい人生を歩もうとしている。
取り残される美織は、やがて東京を憎むようになる。
「親孝行な娘」と褒められるたび、彼女の檻は美しく飾られていく。
母を捨てられない。
親友にもそばにいてほしい。
それでも美織は、母を選び続ける。
そして、追い詰められた彼女は、取り返しのつかない裏切りを犯してしまう。
これは、毒親から逃げればすべてが解決する、という物語ではない。
※ハッピーエンドではありません