リゼルナ侯爵の次男であるヨハンシュは、ある日突然兄から「結婚が決まった」と告げられる。
相手はフォーゼ・ルナ・モーリウス。
モーリウスの毒婦といわれる王女だ。
彼女は国王の命じるまま婚約と婚約破棄を繰り返していることで有名だった。難癖をつけては、いずれ王家をしのぐ力を持ちそうな有力貴族をつぶすのだ。
いったい、どんな不興を買って我が一族の元に王女が……と頭を抱えるヨハンシュに、兄であるジゼルシュが命じた。
「お前がなすべきことはわかるな?」
「俺が……なすべきこと」
「フォーゼ王女を溺愛し、甘やかせ、別れたくないと思うほどに惚れさせるのだ!」
ようするに離婚回避を命じられた。
できるのか、俺⁉ と悩むヨハンシュ。
一方、王女フォーゼも焦っていた。
父王に指示されるまま、幼いころから婚約と婚約破棄を繰り返しているが、罪悪感でいっぱいだった。
もうこれ以上、犠牲者は増やしたくない。
(なんとか理由をつけて離婚し、侯爵家にご迷惑をかけないようにしなくては!)
これは。
離婚したい王女と、結婚したい侯爵家次男の。
すれ違いドタバタ喜劇である。