悪の王女として処刑されたエリザベス。
その罪は、聖女によって作られた悪評──完全な冤罪だった。
断頭台の上で、彼女はようやく思い出す。
自分には前世の記憶があり、この世界が“小説の中”であったことを。
だが、気づくには遅すぎた。
刃は振り下ろされ、彼女の人生は終わった──はずだった。
次に目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。
戻った先は、余命を告げられたあの日。
残された時間はわずかしかない。
復讐を果たすには短すぎる。
憎しみに費やすには、あまりにも惜しい。
処刑の瞬間に見た荒れ果てた民衆の姿。
兄に突きつけられた「無知も罪だ」という言葉。
王女でありながら、何も知らなかった自分。
このまま何もせずに死ぬくらいなら、せめて最後に、ほんの少しでも誰かを救いたい。
そうして彼女は、自分を陥れた聖女とも、処刑を命じた兄とも、元婚約者とも距離を置き、ただ贖罪のために静かに動き始める。
そのはずだった。
「……俺がやる。お前は知らなくていい」
何でも屋と名乗る暗殺者。
危険な裏の顔を持ちながら、不器用なほど真っ直ぐに彼女を守ろうとする男。
「彼女が生きているなら、それでいい。……それだけで、いいはずだったのに」
一度は身を引くと決めながら、たった一目で決意を捨てた元婚約者。
「……やっと会えた。今度こそ、絶対に離さない」
失われたはずの関係が再び絡み合い、彼女の知らないところで、重すぎる想いが積み重なっていく。
一方、エリザベスが動き始めたことで、聖女の描いていた“物語”は少しずつ崩れ始めていた。
これは、罪を背負った王女が贖罪のために生き直す物語。
そして──彼女を守ると誓った男たちが、その覚悟ごと彼女を囲い込もうとする、やり直しの物語。