王立アルカディア学園に通う公爵令嬢リリアーナ・ヴァルフェルトは、周囲から「冷酷な悪役令嬢」と恐れられている。だがその評判は、彼女自身が「悪役令嬢だから嫌われて当然」と信じ、あえて演じているものだった。
標的は、学園で注目を集める聖女候補セレスティア・ルミナス。リリアーナは今日も彼女に嫌がらせを仕掛ける。花壇を荒らし、まずいはずの薬草茶を渡し、困らせようとする。
しかしその行動はすべて裏目に出る。荒らした花壇は美しく生まれ変わり、渡した薬草茶は聖女の疲労を癒す特効薬になる。困らせるつもりの行動が、なぜかセレスティアを助けてしまうのだ。
やがて学園中に噂が広がる。「悪役令嬢様は聖女様を誰よりも大切にしている」「二人の絆は尊い」。婚約者である王太子アルベルトも、二人のやり取りに人知れず限界化し、侍女ミリアも密かにその尊さを見守っていた。
気づけば周囲の誰もが、二人を引き離してはいけないと感じ始める。リリアーナ本人だけが、その事実に気づかない。
彼女は悪役令嬢ではなく、聖女を幸せにする、誰より大切な存在になっていた。