探索者になって十二年。
黒瀬悠真、二十九歳。
公式ランク――E級。
魔力測定は毎年最低クラス。
派手な固有能力もなく、目立った攻略実績もない。
「十二年やってE級?」
「まだ探索者続けてるの?」
「努力しても才能がないなら意味ないだろ」
周囲からは、そんなふうに笑われている。
だが、彼らは知らない。
悠真の魔力が少ないのではない。
――十二年間、二十四時間ずっと、魔力を極限まで圧縮し続けていることを。
そして毎晩、誰もいなくなる午前零時。
悠真はたった一人で、世界中の一流探索者たちが攻略を諦めた未踏破ダンジョンへ潜っていた。
昨日倒せなかった敵なら、今日もう一度。
今日失敗したなら、原因を記録して明日また挑む。
一日で攻略することなどない。
一階層。
一部屋。
時には、たった一歩。
十二年間、ただひたすら積み重ねてきた。
その結果、探索者たちの間ではある都市伝説が囁かれていた。
誰もいない深夜にだけ未踏破領域を更新し続ける、正体不明の単独探索者。
――《午前零時の攻略者》。
そしてついに、その正体へ国内ランキング一位の美少女探索者が辿り着く。
「半年間、ずっとあなたを探していました」
やがて二位、三位、四位、五位――。
日本最強の美少女探索者五人が、世間には秘密で悠真のもとへ集まり始める。
「先生、教えてください」
「師匠、今日こそ圧縮を!」
「悠真さん、また来ちゃいました」
「教官。今夜も同行します」
「悠真先生、私もお願いします」
一方、その事実を知らないランキング六位以下の探索者たちは疑い始める。
「……おかしいだろ。なんでトップ5だけ、答えを知ってるみたいにダンジョンを攻略できるんだ?」
昼は誰にも期待されない万年E級。
夜は、日本最強の五人だけが知る伝説。
これは才能に恵まれなかった一人の男が、誰にも見られない場所で積み重ね続けた十二年間の努力によって――知らないうちに世界最高峰へ到達していた物語。