神殿で「奇跡が弱い」「見映えがしない」と切り捨てられた見習い聖女フィオナは、雪の残る夜の街道へ放り出される。
大きな奇跡は起こせない。けれど彼女には、眠れない人の呼吸や匂い、疲れの偏りを読み取り、休めるように整えるための加護があった。
倒れかけたフィオナを拾ったのは、街道沿いの小さな療養宿で夜番を回す責任者サラ。
宿では旅人よりも、働く側が先に壊れかけていた。寝具は足りず、湯はぬるく、夜番は削られ、眠れないまま朝を迎える者が何人もいる。
フィオナは若女将見習いのユナや夜番の仲間たちと働きながら、香草、湯、食事、寝具の整え方を少しずつ変えていく。
派手なざまあも、王宮での逆転劇もすぐにはない。あるのは、今夜ちゃんと眠れること。明日の朝、誰かが倒れずに持ち場へ立てること。その小さな救いだけだ。
一方、フィオナを追い出した神殿では、利用者より先に働き手が崩れ始めていた。
見栄えのする奇跡だけを大切にし、夜番や洗い場や施療補助を支えていた手を軽く見た結果だった。
これは、追放された少女が「休ませるための力」で居場所と役割を取り戻し、やがて人を救う仕事の価値そのものを塗り替えていく物語。