慶長三年、上杉家は越後を離れ、会津百二十万石へ加増移封される。
新領主を迎える地では不安が渦巻き、家中では古参と新参の軋轢が芽生えつつあった。
その乱世の只中に、現代からひとりの青年が落ちる。
法学部三年──清原湊。
武芸も知識も凡人だが、目の前から決して逃げない“心構え”だけは譲れない。
会津の村で子どもを救ったことをきっかけに、湊は直江兼続への紹介状を得る。
上杉家の行く末を左右する「不遇武将の再登用」「農政改革」「会津統治の再設計」。
大学で培った論理と誠実さを武器に、湊は建白書で家中の空気を変え始める。
やがて彼の存在は、兼続、景勝、そして前田慶次の目にも留まり、
上杉家は史実とは異なる新たな道を歩み出す。
これは──
たった一人の“覚悟”が、上杉家の敗北ルートを覆す物語。
そして、終幕に湊・兼続・慶次が杯を交わす、その夜へ至るまでの記録である。