後宮――そこは絹と香に包まれた、美と権力の迷宮。
だが、そのきらびやかな帳の奥には、誰にも知られぬ“闇”が潜んでいる。
少女・玉葉(ぎょくよう)は、ある事情からその後宮に身を置き、官女にして女道士として日々を過ごしていた。
彼女は“見鬼(けんき)”の眼を持ち、人ならざるものの気配を感じ取る力を持つ少女。
華やかな宮廷に紛れ込む霊異、怨念、呪い。
すれ違う思惑、妃たちの嫉妬、権力を巡る密やかな争い――
術と知恵を頼りに、玉葉は“静かに、しかし確かに”怪異と陰謀に立ち向かう。
舞台は長安、時代は唐の最も華やかだった玄宗皇帝治める開元の世。
果たして彼女は、この魔窟を越え、己の運命を切り拓くことができるのか。
「ねえ、そこのあなた。少しだけ――
わたくしのお話にお耳を傾けていきませんか?」