夜の街をあてもなく歩いていた元バンドマンの青年は、気づけば懐かしい場所の前に立っていた。
かつて仲間と夢を追い、心のすべてを注いだライブハウス。
いまは人影もなく、看板の灯りすら消えたその建物に、なぜか温かな明かりがともっていた。
導かれるように足を踏み入れた先で手渡されたのは、古びたチケットの半券。
そして、置きざりにしたはずのギターが静かに待っていた。
世界が静かに切り替わる。
目を開けた青年が立っていたのは――音楽という概念のない世界。
音が満ちているのに、誰も“音楽”を知らない。そんな世界で――
青年は出会い、響き、共鳴し、“音”の意味を見つけていく。