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取得日時> 2026-06-07 13:09:03
『隣の席の彼女は、今日も高すぎる』
 4月。
 入学式の朝、勢多央《せた
おう》は自分のクラスの席を確かめて、
 思わず動きを止めた。
 最後列の右端。自分の席のすぐ隣に、
 座っていた。
 葛城《かつらぎ》みお。
 正確に言えば、まだ半分しか座っていなかった。
 折り畳まれた長い脚を窮屈そうに収め、背中を極限まで縮め、
 まるでそこに自分がいないかのように、小さく、小さく、息を潜めていた。
 けれど、どうしても隠しきれないものがある。
 圧倒的な、高さ。
 会話らしい会話もなく、最初の日は終わった。
 二日目も、三日目も、大して変わらない。
 ただ、少しずつ。
 「……少し見えにくかったら、ごめんなさい」
 「あ、いや。俺も似たようなもんだから」
 そんな一言が積み重なっていく。
 教科書の端が触れた、次の授業は何だっけ、図書委員が同じだった。
 ありふれた偶然が、糸のようにつながっていく。
 恋には、まだ遠い。
 でも、何かが、少しずつ近づいている。
 ――勢多には、まだ知らないことがある。
   みおの本当の身長のこと。
   みおの家族のこと。
   みおが今日も、背を縮めながら電車に乗っていること。
 ――みおにも、まだ知らないことがある。
   隣の彼が、こっそり早起きをしていること。
   腕時計を撫でるのが、緊張のサインだということ。
   そして彼が、背の高い女の子に憧れていた、ということ。
 高校生たちの日常を、ゆっくりと。
 急がず、焦らず、少しずつ近づいていく物語。
※『カクヨム』でも同時掲載しています。

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