異世界転移した。
ステータスも出た。
スキルもあるらしい。
勝った。
そう思った俺がバカでした。
「……内容が履歴書じゃねえか!」
異世界が拾い上げたのは、若き勇者でも、選ばれし英雄でもなかった。
黒い沼から這い出してきたのは、五十二歳。
チートも若さもない。ただ、現場で何とかしてきたおっさん、堺井真司だった。
剣で戦う力はない。
魔法で敵を吹き飛ばす力もない。
もちろん、魔王を倒す予定もない。
真司にあるのは、
戦い方ではなく働き方。
魔法ではなく話法。
剣よりペンの使い方。
異世界で問われたのは、異能よりも実務だった。
言葉は通じない。
身元もない。
帰る方法もわからない。
それでも真司は、仕事で鍛えた観察眼、段取り、交渉、企画力を頼りに、一つずつ状況をほどいていく。
黒沼と呼ばれる世界の傷。
本人にしか見えない謎のボード。
異邦人を警戒する人々。
そして真司を、
「荷物」ではなく「助けてくれた人」と見る少女と、
観察と記録を繰り返す、ミステリアスな美女。
チートなし。
勇者なし。
無双なし。
あるのは、地味で現実的な実務経験だけ。
異世界テンプレを信じた中年男が、剣も魔法もないまま、実務能力だけで生き延びる。
現実対応型・実務サバイバルファンタジー。