戦えない。
だが、誰を、いつ、どう帰すかなら分かる。
六年前、上層部が補給計画を無視した灰岳迷宮の遠征で、十一人が死亡した。
責任を押しつけられ探索業界を去った元兵站主任・真壁修司は、閉鎖された迷宮の前に食堂「帰路亭」を開く。
開店初日、店先に倒れていたのは、血まみれの女性Sランク探索者・神代凛花だった。装備には、閉鎖区域の深層にしか生えない夜光蕨。そして彼女は告げる。
「下に、二人残した」
戦闘力のない元補給係と、国内最強なのに食事と撤退が苦手な探索者。
武器ではなく、装備の痕跡、補給計画、撤退経路、そして温かい食事で、迷宮に取り残された者たちを帰していく。
閉鎖ダンジョンの違法再稼働。消された事故記録。帰還人数の食い違い。
一つの救助をきっかけに、帰路亭には「普通の救助では帰れない探索者」が集まり始める。
これは、戦えない男が「全員を帰す」ための拠点を作る、現代ダンジョン救助×食堂のお仕事ファンタジー。
※事件ごとに一区切りのある連作形式です。