前世は、しがないホームセンター勤務の三十四歳の女。
仕事へ向かおうとしていたはずの私は、気が付けば異世界の赤ちゃんになっていた。
しかも生まれたのは、山奥にある貧乏男爵家。
ストラグル・フォン・パンパ男爵を父に、兄と姉を持つ次女――クルークとして。
「貴族に転生したなら、勝ち組じゃん!」
そう喜んだのも束の間。
屋根には穴が開き、領地には平地がほとんどない。人口は少なく、集落は山中に点在。
農業を大きくするのも難しい。
そして、領地の主産業は――木材と竹。
「……これ、どうやって発展させるの?」
領民たちも、ここは山の中だから仕方がないと、領地の発展を諦めていた。
けれど、クルークは知っている。
木も竹も、ただ売るだけではない。
加工すれば。工夫すれば。価値を変えれば。
もっと多くの人に必要とされる商品になる。
前世でホームセンターに勤めていた知識を頼りに、クルークは身近な材料から新しい商品を作り始める。
最初に目を付けたのは――炭。
さらに、兄のブレイ、姉のワイズと一緒に試行錯誤するうち、思わぬ物まで生まれていく。
「これ、商品になるんじゃない?」
ただの貧乏男爵領。
そう思われていたパンパ領は、まだ誰も気付いていないだけだった。
山には木がある。竹がある。人がいる。
そして――変える方法を知らなかっただけだ。
これは、前世の知識を持つ少女クルークが、兄や姉、領民たちと力を合わせ、何もないと思われていた山奥の男爵領を少しずつ豊かにしていく、王道領地開発ファンタジー。