二部構成で読み味がガラリと変わる読書体験をあなたに!
第一部 にくゑ
【資料番号:不明】
某県山間部、虚木村。
全戸二十七棟、住民ともども焼失。生存者・遺体、共に確認されず。
本記録は、事件後に現地から回収された断片資料――日記、カルテ、行政文書、そして一人の少女の手記を、時系列に沿って再構成したものである。
転校生・矢野梓が虚木村に来たのは、母の死をきっかけとした帰郷だった。
村人は皆、穏やかに笑っていた。三度、笑うことが村の掟だった。
なぜ道の端を歩いてはいけないのか。なぜ同級生が一人また一人と消えていくのに、誰も気づかないのか。
梓だけが、記憶を消されないまま、それを見ていた。
資料を集めたルポライターもまた、村で「何か」に遭遇し、記憶の一部を失っている。
読み進めるほどに、あなたの中にも同じ違和感が――芽生えていないだろうか。
以下、収集された資料から作られた物語を公開する。
第二部 終焉の探偵
東京で暮らす女子高生・虚木真弓は、世界が溶けていく夢を繰り返し幻視していた。
街も人も輪郭を失い、赤黒い肉の塊となってひとつに融け合い、劫火の果てに消える終焉の光景――
ある日、真弓の前に黒いコートと鎖を身にまとう謎の男が現れる。
男は自らを「探偵」と名乗り、こう告げる。
「世界は終焉を迎えようとしている。ぼくはそれをもたらすものを追っている」
同じ頃、東京では不可解な人体融解事件が続発する。
溶けた人々の残骸は赤黒く脈打ち、都市は少しずつ胎内のような変質を始めていた。
現代の東京を舞台に、終焉の探偵の物語が幕を開ける。