王立学園のパーティーで、婚約者のマクシミリアンから大勢の前で突然の婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢セレーネ。
普通なら絶望する場面だが、彼女の心はこの一年間で最も強い喜びに満ちていた。
なぜならセレーネは、日が落ちると『黒猫』に変身し、高度な魔法を操れる特殊体質の持ち主だったから。婚約者に合わせる窮屈な日々から解放された彼女は、大好きな夜の街へと駆け出す。
黒猫『ノラ』として夜のお散歩を楽しんでいたある日、夜警を務める仮面の青年アランと出会い、お菓子に釣られて成り行きから彼らを手伝うことに。実はアランの正体は、この国の第三王子ルシアン。そして彼は、十年前に時計塔で孤独な自分を救ってくれた『喋る黒猫』を、今もずっと探し続けていた。
ある出来事をきっかけに黒猫としての夜の散歩をやめたセレーネは、昼の学園でルシアンと再会する。しかし彼は黒猫の正体に気づきながらも、彼女の秘密を守るため、初対面のふりを選んだ。
夜警の青年に初恋をしたセレーネは、その想いを胸にしまったまま、今度は学園で出会った王子にも少しずつ惹かれていく。まさか、その二人が同じ人だとは知らぬまま……。
これは、昼は眠たげ、夜は無敵な黒猫令嬢と、一途すぎる仮面王子が、お互いを想いながらもすれ違い続ける、じれったくて温かな秘密の恋物語。