「これ以上深入りするなら、俺のそばから離れないと約束しろ」
借金。没落。蒸発した父。病弱な母。
没落子爵令嬢ハリエット・ガルシアの人生は、控えめに言っても最悪だ。
昼は複数のバイトを掛け持ち、夜は高級ラウンジ〈パピヨンノワール〉で働く密偵「ローズ」。
目的はただ一つ。借金を完済し、平穏な暮らしを取り戻すこと!
ところが厄介な客が現れた。冷徹な近衛騎士にして、彼女の婚約者——レックス・アシュフォード。
昼は氷のように冷たいくせに、なぜか夜の「ローズ」の元へ熱心に通い詰め、熱い視線を送ってくる。
ド直球で口説いてくる彼に、ハリエットは絶句する。
いや、あなた婚約者いるでしょ。私だけども!
「上等よ。浮気なら、慰謝料がわりに情報を頂くわ!」
噛み合わない二人の、嘘と本音の攻防戦が始まる。
※本作は産業革命期をモチーフにした架空の世界を舞台としています。登場する文化・習慣・宗教等はすべて創作であり、史実とは関係ありません。