王妃の右腕として仕えてきた元筆頭侍女エルナは、王妃の差配でアッシュフォード公爵家へ嫁ぐことになった。
しかし輿入れの日、夫である公爵は不在。式もなく、通されたのは女主人の私室ではなく客間。屋敷では、かつて公爵夫人になるはずだった令嬢が女主人のように振る舞っていた。
「私は、望まれて来た妻ではないのね」
そう思い込んだエルナは、出しゃばらず、けれど困っている人を放っておけず、王妃の側で鍛えた観察眼と采配で屋敷のほころびをそっと整えていく。
一方、無口な公爵ヴィルヘルムは、実は最初からエルナを望んで妻に迎えていた。だが恋愛に不器用すぎるせいで、好意は「仕事への評価」と受け取られ、贈り物は「手切れ金」と誤解され、肝心な言葉はいつも届かない。
有能すぎて自分への愛だけは信じられない妻と、妻が好きなのに伝え方が壊滅的な公爵の、明るくじれったいすれ違い夫婦物語。