王国中央家庭調停所。
そこには、世界を救った勇者も、婚約破棄を宣言した王太子も、聖女も、公爵令嬢も、魔王も、竜騎士もやってくる。
愛、正義、真実、使命。
大きな言葉は、調停室ではそのまま通らない。
勇者様。
魔王軍四天王の名前は言えるのに、お子様の幼児園の担任名は言えないのですね。
王太子殿下。
真実の愛については記録しました。
では次に、大聖堂のキャンセル料を確認します。
調停官ユリス・グレンは、怒鳴らない。
裁かない。
断罪もしない。
ただ、当事者の言葉と証拠と生活の現物を机に並べる。
上履き。
連絡帳。
婚約契約書。
大聖堂の予約台帳。
名誉回復文書。
養育費算定表。
世界を救った者も、王国の未来を背負う者も、家庭と契約の後始末からは逃げられない。
これは、異世界の家庭裁判所で、調停官が淡々と、けれど確実に、人間関係の破綻を整理していく実務ファンタジー。