三十五歳、独身。ブラック気味の会社で働く中堅社員・久我陽介は、ここ数週間、奇妙な体調変化に悩まされていた。
昼間は異様にだるく、朝日が目に刺さるほどつらい。
なのに夜になると眠気が消え、頭が冴え、仕事が異常な速度で片付いていく。
みなし残業制の会社で、その力は当然のように使い潰された。
三日連続で朝五時まで働いた帰り道、久我はコンビニで店員の指先から流れた血に、ありえないほど強い渇望を覚えてしまう。
そんな彼に声をかけたのは、制服姿の少女・皇かれん。
「貴方、気付いていないかもしれませんけど、吸血鬼になっていますよ?」
彼女の宣告により、久我は現代社会の裏側に存在する異能の世界へ足を踏み入れることになる。
吸血鬼。
能力者。
特殊事象を扱う行政機関・八咫烏。
そして、夜の街で人知れず行われる異能バトル。
会社では便利に使い潰されていた久我の“夜の力”は、裏の世界では規格外の才能だった。
女子高生師匠に叱られ、役所で登録手続きをし、輸血パックで飢えをしのぎながら、三十五歳の社畜は新人吸血鬼として夜を戦い始める。
これは、人生に疲れた男が、現代異能社会でようやく正しく評価されていく物語。