大晦日二日前。
温泉旅行へ向かう途中、交通事故で命を落とした夫婦・優輝と皐月。
目を覚ますと二人は、人ではない存在――ダンジョンマスターと、その眷属となり、誰もいない異世界で新たな人生を歩むことになっていた。
温泉を作り、美味しい料理を食べ、季節を再現し、小さな幸せを積み重ねながら暮らしていく二人。
やがて二人が創り出した温泉は、異世界の人々にとって想像を絶する効果をもたらしていく。
女王が胃痛に悩まされるほど周囲を騒がせ、温泉のとんでもない効能に人々が混乱し、そして熱狂していく中でも――二人の穏やかな時間は、何も変わらない。
しかし、人ではなくなったことへの葛藤や、愛する人を失う恐怖は簡単には消えない。
それでも二人は手を取り合い、何度でも「一緒に生きよう」と誓い合う。
これは世界を救う英雄譚ではない。
女王が胃を痛める世界の片隅で、永遠を生きることになった一組の夫婦が、何百年先の「来年」も共に迎え続けるための物語。
※本作には交通事故、死、流血描写、およびトラウマなどの描写があります。苦手な方はご注意ください。