矢部 維胤(やべ これたね)、四十五歳。
ブラック企業で部下を守るために身を削り続けた末、過労の果てに命を落とした戦国オタクのサラリーマンは、肥後の名族
阿蘇家(あそけ)
の若君、阿蘇 惟種(あそ これたね)
として目を覚ます。
だがそれは、単純な転生ではなかった。
前世の記憶は曖昧に混じり合い、彼はあくまで
阿蘇 惟種(あそ これたね)
として生きている。
しかも本作では、阿蘇 惟将(あそ これまさ)
が物語開始の一か月前に死去している。
父
阿蘇 惟豊(あそ これとよ)
は健在だが、次代を担う嫡流は
惟種(これたね)
ただ一人。
もし病に伏した若君まで失えば、阿蘇家(あそけ)は嫡子を失い、家中はたちまち揺らぐ。
そんな中、惟種は高熱の夢の中で、飢饉、戦、鉄砲、商い、そして国が傾く未来の断片を見た。
若君の異変に最初に気づいたのは、阿蘇家(あそけ)
を支える重臣
甲斐 宗運(かい そううん)。
未来を夢に見る若君と、現実を動かす名臣。二人は手を取り、農政、商業、軍制、外交を少しずつ変えていく。
相手は
大友家(おおともけ)、島津家(しまづけ)、相良家(さがらけ)――そして、やがて畿内へ覇を唱える織田信長。
これは、火の山に抱かれた若君が、夢に見た未来を現実へ変えていく、戦国内政譚。