拾い拾われ、ようやく触れた本当の君。
主従ではいられなかった二人の物語。
感情と魔力を封じられて育った少女ティールは、
ある夜、夜会の帰途で誘拐され、馬車の中で抑え込まれていたすべてを噴き上げさせてしまう。
崩壊したのは術式だけではない。
彼女を縛っていた秩序と、「何も感じずに生きる」という在り方そのものだった。
暴走の中心で泣き崩れる彼女のもとに駆けつけたのは、幼い頃から仕え、唯一の味方である執事ヴィクトル。
彼は彼女を抱きとめ、国を捨ててでも守る決断を下す。
それが、忠誠で覆ってきた自分自身をも壊す選択だとしても。
これは、奪われていた感情を取り戻していく少女と、守ることしか知らなかった男が、主従でも救済でもない関係を選び直していく物語。
闇と依存の先に、それでも手を離さなかった二人の行く末を描く物語。