武田加奈、二十四歳の冴えない事務職OL。
ある日曜日の午後、暖かな日差しを浴びながら、愛犬のレイといつもの公園を散歩。
突如、足元の芝生から猛烈な白い光が噴き出し、視界が真っ白に染まり、強烈な浮遊感に胃が浮く。
混乱する私は、|愛犬《レイ》をぎゅっと抱きしめ、目を閉じる。
次の瞬間、私は冷たい石床の上に立ち尽くしていた。
目の前には、三段腹を真っ赤なベルベットのマントで包んだ中年男。
見るからに王なのだろう。
その傍らには、金髪をなでつけ、軽い女なら一瞬で落とせると確信していそうな、色ボケた表情の男。
王子様なのかもしれないと、そんなことを考えていた。
「ついに我が国にも聖女が現れたのだな!
これでこの国も……ぐははははっ!」
王と思われるおじさんが笑い声を上げる。
ローブを着た老人たちがステータスを確認すると言い、水晶玉のような道具をこちらに翳していた。
目の前で映し出される異国の文字。
だけどはっきりと意味が理解できるその光景に、ああ、異世界転移というやつなのかも?と首を傾げる。
鑑定結果が出た途端、彼らの顔から露骨に期待が消え失せた。
私のスキルは「保護者」という、望みとはかけ離れた理解不能な内容だったようだ。
「なんだ、聖女ではないのか?
まったく、ぬか喜びさせおって、使えん女だ!」
王が虫ケラを見るような目で私を睨む。
期待外れだったからって、その態度はあんまりだ。
そう思って苛立つ私。
すると、王子がニヤけながら私の顔を覗き込んできた。
「顔立ちは悪くないな。
俺の妾ぐらいにはしてやってもいいぜ?」
彼は安っぽい香水の匂いを漂わせ、私の腰に手を回そうとしてきた。
ヨレヨレのパーカー姿の私に妾の打診とか、この王子の審美眼はどうなっているのか。
怒りよりもそんなことを考えてしまう。
こうして、私の異世界の冒険は幕を開けた。
◆◇◆◇◆
※作中に登場する団体、国、人物など、全て架空の存在です。
2026.06.13
26話、43倭、魔人の敬称に誤りがありました。訂正します。
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