伯爵令嬢ヴェルティナには、2歳年上の婚約者ジェフリー侯爵令息がいた。
婚約2年目、ジェフリーの幼馴染クラウディア男爵令嬢が「不治の病、余命半年」と宣告される。ジェフリーはクラウディアの看病に明け暮れ、ヴェルティナとの予定を九度反故にした。
9度目の夜会の壁際で、彼は囁いた。
「すまない、ヴェルティナ。クラウディアと添い遂げてやりたい。婚約を解消してくれないか」
ヴェルティナは静かに笑った。
――承知いたしました。
ところが、それから一月もしないうちに、クラウディアの病は奇跡的に快復してしまう。
ヴェルティナの父と兄は、最初からこの病を疑っていた。兄の友人にして王立医師団主席・セバスチャン公爵令息が集めた証拠が、すでに整っていたのだから。
「詐病ではないのかしら? お抱えのお医者様にも、もう一度診ていただきましょうね」
完璧な敬語のまま放たれた問いかけが、2人の運命を決めた。
※本作は同タイトルの短編の連載版です。