かつて日本の過酷なIT企業でシステムエンジニアとして心身をすり減らしていた青年は、並行世界の地球軌道上に浮かぶ完全ステルス要塞〈サイト・アオ〉にて目を覚ました。彼の新たな肉体は、銀河皇帝のスペアとして培養された完全無欠のクローン「ティアナ・レグリア」。圧倒的な超能力と星間ネットワークの最高権限を手に入れた彼は、銀河中での大冒険を早々に「クリア」し、自身の命が絶対に脅かされることのない安全な基地から、地球のネトゲやアニメを楽しみ尽くす究極の隠居生活を始める。
しかし、眼下の地球には、太古より異星文明が遺した「滅亡級のオーバーテクノロジー(遺産)」が無数に眠っていた。未熟な人類たちは、その遺産の真の恐ろしさも原理も知らぬまま、それぞれの限られた情報網の中で致命的な火遊びを繰り広げていく。
裏社会とネット民の狂騒
安全装置の壊れた異星の旧式歩兵銃「G7-Vブラスター」を「神の兵器(アポロンの矢)」と勘違いした裏社会の武装勢力たちが、粗悪なコピーを製造しては次々と自爆。ネット上では当局の隠蔽発表から「紫のガス爆発」としてミーム化されるが、一部の層は真実に肉薄しつつもノイズの海に呑まれていく。
米国の覇権志向(セレスティアル・ウォッチ)
ティアナからの気まぐれなリークにより、「アポロンの矢」のオリジナルを地中海で回収した米国の極秘組織。彼らはそれを世界の軍事バランスを単独で塗り替える覇権兵器とみなし、量産化と実戦配備へと冷徹に踏み出していく。
欧州の狂信(ヘルメス協会)
特権階級の集まりである秘密結社は、かつて文明を滅ぼした極端な精神偏重の異星端末「ミノスの星円盤」を究極の真理と崇め、新月の夜に向けた危険な起動儀式の準備を進める。
日本政府の「正しい恐怖」
米国からの限定的な警告を受けた日本政府は、出雲の山奥に存在する「魂の庭」へのアクセスポイントを調査。未知の防衛機構による強烈な拒絶反応を前に、無理な物理的干渉を避け、国家特異事象として慎重な遠隔監視体制を敷く。
世界各地で破滅へのカウントダウンが静かに、だが確実に進む中。
ティアナは絶対的な上位者(特等席の観測者)として、人類が自らの愚かさで自滅するのか、それとも新たな進化の扉を開くのかを、日課のネトゲの合間に極上のエンターテインメントとして傍観し続ける。