東京都立病院、深夜の救命センター。
救急医・佐藤美咲(28歳)は十二時間連続勤務の末、交通事故で運ばれた七歳の少女を救えず、過労で倒れた。
「もう一度生きて、今度こそ――」
その願いが叶ったのか、目覚めると中世ヨーロッパ風の異世界。自分は十歳の少女リーゼ・ハイムダルになっていた。辺境伯爵
家の長女として生まれたこの世界には、現代医学が存在しない。
消毒の概念もない。麻酔もない。抗生物質もない。
目の前で人々が病気や怪気で死んでいく。前世の記憶を持つリーゼは、幼い体で医療改革に乗り出す。
手洗いの徹底、外科手術の導入、薬草研究、医学校の設立――。十歳の「幼女名医」として次々と成果を上げる彼女だが、貴族社
会の偏見、古い医療体制との衝突、そして幼い体の限界と戦わなければならない。