人類が住めなくなった地球を捨て、新天地を求めて恒星間移民船は旅立った。
重力を操り、ナノマシンで物質を作り変え、遺伝子から新たな生命すら生み出せる時代。
しかし航行中、移民反対派による破壊工作によって船は予定していた惑星を通過してしまう。
生き残った技術者・天城蓮は、新たな移住先を探し出し、十二万人を眠らせたまま再び長い航海へと旅立った。
やがて辿り着いた新天地。
そこは人類がそのまま暮らせる星ではなかった。
人類は再び眠りにつき、長い長いテラフォーミングが始まる。
――そして、数千年後。
森にはエルフの国があった。
空にはドラゴンが舞い、草原をペガサスが駆け、角を生やしたウサギが跳ね、森の片隅ではスライムが這っている。
人類が眠っている間に、そこには歴史が生まれ、国家が生まれ、宗教が生まれ――いつの間にか、どう見ても「ファンタジー世界」が出来上がっていた。
だが、魔法も、魔物も、エルフも、神話さえも。
その始まりを辿れば、すべては人類が残した科学へと行き着く。
そして長い眠りを終えた本来の移住者たちが、ついに地上へ降り立つ。
彼らを待っていたのは、新天地などではなかった。
すでにそこを故郷として、数千年を生きてきた者たちの世界だった。
これは異世界へ転生する物語ではない。
人類が科学で作ってしまった「異世界」に、数千年遅れて人類自身がやって来る物語である。