炎を宿す少年と、癒しの力をもつ少女の逃避行。
力を受け入れたい者と、手放したい者。二人が目指すのは、同じ場所だった。
――雪深い大陸イース。
山岳交易路で〈背運び〉をして生きる十七歳のリセルは、東の大陸へ渡るため、旅費を稼いでいた。
そこには、火の民〈ユーファ〉の血を引く自分でも、生きられる国があるという。
故郷も、育ててくれた大切な人も失った。
もう誰とも深く関わらない。そう決めていた。
けれど雪解けの道で、倒れていた少女エリシアを助けてしまう。
癒しの力を持つ彼女は、聖女候補として囚われていた聖堂から逃れてきたのだった。
追手を逃れ、禁忌の森の奥へ。
傷ついた二人が辿り着いたのは、迫害を逃れた人々の暮らす隠れ郷だった。
温かな食事。誰かと囲む火。
その暮らしの中で、二人は自らの力にまつわる伝承を知る。
起源とされる場所は、黎火の郷。
リセルは、恐れてきた炎を受け入れるために。
エリシアは、力を手放し、自分の人生を取り戻すために。
異なる願いを胸に旅立つが、港町でエリシアは連れ去られてしまう。
倒れたリセルを救ったのは、由賊団〈アルバトロス〉だった。
つかみどころのない頭領スイ、口の悪い剣士ラグド、不思議な青年クロファ。
船員や子どもたちに囲まれ、望んでいた東の大陸へ渡る道が開かれる。
一方、王城へ連れてこられたエリシアは、次期聖女として客人のように迎えられていた。
整えられた部屋には、鍵さえかかっていない。
けれど、そこで呼ばれるのは、自分の名前ではなかった。
彼女を置いてはいけない。
リセルは海を渡らず、由賊たちと救出の準備を進める。
剣を学び、目指すのは、王の生誕祭に沸くラファスの王城。
逃避行の緊張感、食卓や焚き火を囲む温かさ、仲間との掛け合い。
喪失を抱えた少年と少女が、互いの隣に居場所を見つけていく、冒険ファンタジー×ヒューマンドラマ。
【本編完結済】
第一章〜第四章〈出立編〉
第五章〜第八章〈誓い編〉
三部作構想の第一部。本作の物語は完結。
【前日譚『雪の終わりと始まりの炎』公開中】
リセルと羊飼いフィンの日々を描く全16話+エピローグ。
暗く重い展開と本編のネタバレを含むため、本編読了後をおすすめします。気にならない方は単独でもどうぞ
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