瘴気が沸き続ける世界で、浄化の力を持つ聖女は、両手に銀色の爪を持って生まれる。リラは左手の爪だけが銀色という特異さから、『半聖女』と陰口される微妙な立場に居た。それでも所属する聖騎士団で懸命に使命を果たしてきたリラだったが、団長から疎まれ、ついには退団に追い込まれてしまう。
寄る辺なく大路を歩いていたリラの耳に聞こえてきたのは、楽しげな音楽だった。旋律と歓声に誘われて広場に着くと、小さな音楽団が盛況の只中に居た。趣味のリュートを担いでいたリラの姿が楽団員の目に留まり、即興のデュエットが始まる。歌声を高く評価され、行く当てもなかったリラは、楽団の誘いに応じて加入を決心した。
ところが、旅の音楽団の正体は小国の王子様御一行。彼らは、瘴気の被害に喘ぐ国を救う手段を求めて、音楽団に扮して諸国を視察していたのだった。瘴気に蝕まれた傷がリラの歌声で癒えるのを目撃した王子は、彼女に救国の希望を見ていた。
立場に囚われずただ人を助ける活動をしたいと望む聖女リラ、緩やかに滅びに向かっている国を救いたい王子アルドール、そして本人すら知らなかったリラの真の力に気付かず追放してしまった騎士団長ファルサ。彼らの意志と思惑は、やがて大陸全土を巻き込む物語を紡いでいく。
※各話2000~3000字程度
※全160話(後日譚含む)