「世界を救え、とは言わぬ。なんなら、滅ぼしてくれて構わんのじゃ」
異世界転生、最初の頼まれごとがこれだった。重い。
聞けば、俺の住んでいた地球はまるごと作り物の仮想世界で、システムのバグで俺の魔力だけがほぼ無限らしい。なるほど、わからん。だが俺の返事は決まっている。
救わない。滅ぼさない。働かない。
最強の力の使い道はただ一つ。ふかふかのベッドと、うまい飯と、誰にも邪魔されない昼寝を守ることだ。
……そのはず、だった。
力を隠して静かに暮らしているだけなのに、なぜか俺の「正体」が勝手に増えていく。もちろん、全部間違いである。
本人が昼寝している間に、周囲の勘違いは今日も育つ。
頼むから、静かに暮らさせてくれ。
無礼な奴は、まあ、それなりに。