男爵令嬢リリアーナは、王命によって『氷の公爵』と恐れられるアルベルト・フォン・シュタイン公爵と結婚することになった。
しかし、結婚初日に告げられたのは――
「君を愛することはない。」
政略結婚なのだから仕方がない。
そう納得したリリアーナは、ふと思う。
――夫婦仲を深める努力をしなくていいなら、暇になってしまった。
そこで始めたのは、まさかの『冷徹公爵観察記録』。
・目を合わせない。
・返事が短い。
・猫を見ると声が優しくなる。
・否定が早い時は図星の可能性が高い。
観察の結果、冷徹公爵というより、大型の警戒心が強い猫に近い生態であることが判明した。
一方のアルベルトは、
「なぜ妻は私を観察しているんだ……?」
と困惑するばかり。
感情を表に出すのが苦手な冷徹公爵と、
少しズレている観察好き令嬢。
これは、観察する側とされる側だったはずの二人の距離が、
少しずつ、そして確実に近づいていく物語。
今日の観察記録。
・最近、公爵様はこちらを見ている時間が長い。
・距離も近い。
・どうやら観察対象が観察者を観察し始めたらしい。
……追加観察が必要である。