社畜として皆に尽くし続けたサラリーマン、佐藤誠(35歳)は、神の手違いで呆気なく死亡する。神から謝罪とチート能力を与えられ、次に目を覚ますと、そこは妹が熱中していた乙女ゲームの世界。
彼は、物語のヒロインを虐げ、最終的に断罪・処刑される運命にある悪役令嬢、セシリア・アストリアにTS転生していた。
「処刑エンドまで、残り一年。」
絶世の美少女だが冷たい表情のセシリア(元誠)は、前世で培った観察眼と、神から授かったチート能力【隠密の聖痕】を駆使し、破滅を回避することを決意する。
【隠密の聖痕】――それは、聖女を凌駕する強力な聖なる力を行使しても、その痕跡も功績も全て消し去り、誰にも気づかれないという特殊能力。
セシリアは知っていた。破滅の原因は、ゲームの裏に潜む王国の腐敗、そして大いなる闇にあることを。
彼女は、自ら悪役令嬢の汚名を被り続け、あえて冷酷に振る舞うことで、誰も自分を疑わない「世界の敵」の立場を確立。その影で【隠密の聖痕】を使い、王子の暗殺を防ぎ、聖女に迫る危機を排除し、困窮した民を救っていく。
――全ては、皆を救うため。そして、孤独な悪役令嬢として断罪されるその瞬間まで、誰も自分の真意に気づかないように。
聖女は光の功績を積み上げ、民はセシリアを「冷血」と罵る。婚約者の王子は彼女への失望を深めるばかり。
彼女が救った人々は、今日もセシリアの冷たい言動に心痛め、彼女の処刑を願う。
「ああ、誰も俺(私)のやったことなんて、知らないんだな」
元サラリーマンの献身的な心と、冷酷な悪役令嬢としての仮面の間で引き裂かれるセシリアの孤独な戦いは、いかにして破滅の未来を覆すのか?
これは、誰にも理解されずに世界を救い続けた一人の「影の聖人」の、切なくも壮大な救済の物語。