六十五歳、年金暮らし。
老後の計算ノートを前にため息ばかりついていた山本正男は、
「一度でいいから、ちゃんと世界を見て、ちゃんと考えて生きてみたい」
そんな願いを胸に眠りにつく。
目を覚ますと、そこは1970年の実家。
しかも身体は小学四年生の自分に戻っていた。
匂いも、天井も、机も、ラジオ体操の音も、すべて記憶どおり。
ただし──
本来いないはずの中学生の姉がいて、
自分の名前の漢字も「正男」ではなく「政雄」になっている。
世界は“ほぼ1970年”なのに、どこかが少しずつ違う。
未来の知識チートもない。
歴史の年表も覚えていない。
あるのは、六十五年間の平凡な人生と、
「上辺だけで生きてきた」という後悔だけ。
それでも政雄は腹をくくる。
今度こそ、ちゃんと世界を見て、ちゃんと考えて、生きてみる。
そしてできれば──
年金に怯えず、金にも女にも困らない人生を、自分の手でつかんでみたい。
これは、
“微妙にズレた昭和”へタイムリープした男が、
人生をやり直しながら、世界の違いと自分の限界に向き合う物語。