ダンジョンが日常の一部となった現代日本。
F級探索者・久世直人が持つスキルは、《帰り道》。
できることは、ただ一つ。
今いる場所から、地上へ安全に帰れる道が見える。
魔物は倒せない。宝箱も見つけられない。身体能力が上がるわけでもない。
攻略には何の役にも立たないハズレスキル。
そう評価された直人は、探索者として大成することを諦め、ダンジョンで遭難した人間を地上まで案内する仕事をしていた。
そんなある日、人気S級探索者・神代美波率いるパーティが、ダンジョン深層で大規模な階層変動に巻き込まれる。
地図は使えない。
帰還石も作動しない。
日本トップクラスの探索者たちでさえ、帰り方が分からない。
全滅の危機に陥った彼らの前に現れたのは――たった一人のF級探索者だった。
「迎えに来ました。帰りましょう」
戦うことならS級には敵わない。
けれど、帰ることだけなら誰にも負けない。
S級パーティを全員生還させたことで、直人の存在は一気に知られることになり、彼のもとには次々と救難依頼が舞い込むようになる。
迷子になった初心者。
負傷して動けなくなった探索者。
崩落したダンジョンに取り残された人々。
そして、誰も生還したことのない場所から届いた救難要請――。
これは、最強にはなれなかったF級探索者が、《帰り道》だけを頼りに、誰より多くの人を生きて家へ帰していく物語。