伯爵令息オルゴ・デスタルータは病床に伏せる母親の他殺死体を発見し、あれよという間に容疑者に仕立て上げられ、死刑を言い渡される。獄中では性根の腐った看守から罵倒され小便をかけられ、されど彼は表情一つ歪ませず凛とする。『必ずや父君が冤罪を解いて下さるだろう』と信じ、両腕を組んでその時を待っていた折、何か異様な雰囲気を纏わせた看守が彼の房の前に現れ、引き連れてきた赤髪赤目の少女を檻の中に入れて去る。彼女の名はレベッカ・レオナルディ。『禁術破り』の罪状で死刑を宣告されたのだという彼女といくつか言葉を交わしている内に、オルゴは啓示みたく閃きを得て、自らの血液をインクにして床一面に書き殴る。何ら意味を為さない怪文書の上に立ち、ある呪文を唱えると、彼を中心に薄赤色の旋風が巻き起こる。それが止むと彼は吸血鬼に変貌しており、捥いだ左腕を筋骨隆々の怪物に作り変えて看守らのことごとくを蹂躙させつつ、高貴なる身分に相応しい豪華絢爛な衣装を自らの血液から生成し、レベッカにも着せ、完全に無力化した地下牢獄を二人並んで悠々と出る。病に伏せて無抵抗だっただろう母君を無残にも殺害し、あまつさえ自らにその冤罪を吹っ掛けて陥れた不埒者はいったい誰なのか。彼は真相を追い求め、生まれ育ったザンナの国を去った。
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