──《希望なき国に、希望を》──
「なぜ、人類は《ゾンビ》に負けるのか?」
《ゼノン》は、こう答えた。
「奴らは、人類が築いた国家というシステムを効率的に破壊する」
【リアルゾンビパニック×ミリタリー】
黒瀬慎也(陸上自衛隊第一師団師団幕僚長)
あと《5日》で日本が滅ぶと知ったとき、
私のマスターであり、司令官だった彼は、こう言った。
「俺が救いたいのは、今、この瞬間にも命脈が尽きようとしている俺たちの国と、そこに何も知らずに暮らしている数多の国民だ」
非合理の象徴だった。
だが、その非合理が、《運命》を動かした。
国家の命運を背負った若き官僚の、《祈り》によって。
如月遥(内閣危機管理局・国土危機情報分析官)
彼女は、私にこう告げた。
「これは、絶望の中で、唯一選び取ることのできる、希望のかたちです」
私は、再演算した。
彼女の言葉に宿った《希望》という名の、未知の変数を加えて。
私は結論を変えた。
これは、滅亡に至る記録ではない。
これは、《生き残る未来》が存在すると信じた者たちの非合理な祈りと決断が紡いだ、《抵抗の記録》である。
我々は、まだ確かに生きている。
この国の滅びを拒み、歯を食いしばり、希望を掲げ、絶滅という《運命》に抗っている。
あらゆるゾンビものが描く、《いつの間にか国家が滅んでいる》という安易な結末を、我々は許容しない。
──違う。
この国は、そんなに脆くなどない。
──私も、そう、信じる。
『黒瀬慎也。あなたの、その非合理な意志と、俺の演算で、この希望なき国に、希望という名の可能性を与えよう』
──《死線の国境》──
これは、国家とゾンビの全面戦争。
そして、未来を信じた《共犯者たち》の記録である。
《ゾンビ》よ、知れ。
──この国が、容易く滅びると、思うな。