ヴァイオラは皇帝の娘でありながら、双子であることを理由に冷遇されていた。平和を望むヴァイオラは周辺国を侵略する父を諫めるが、聞き入れられることはなく、女嫌いで引きこもりと噂される辺境伯令息との婚約を命じられてしまった。
そんな中、兄セザリオは隣国王女ミシェルとの結婚式前日、落馬事故で意識を失ってしまう。皇帝はヴァイオラに兄の代役を命じ、彼女は男装して婚礼へ挑むことになった。
婚礼後、兄が目覚めぬまま日々を過ごすうち、ヴァイオラは平和を願うミシェルに共感し、次第に惹かれていく。女性にときめく自分に困惑するヴァイオラだったが、やがてミシェルが女装した王子だと知る。互いに正体を明かした二人は惹かれ合い、固い絆を結んだ。
実はミシェルは、初夜に皇太子を暗殺する使命を帯びていた。しかし、皇太子が男装した少女だと気付き、計画を実行しなかったのだ。
その頃、皇帝は皇太子の昏睡による心労で体調を崩し、酒に溺れるようになっていた。ヴァイオラは宰相から、皇太子として政務代行を求められる。最初は戸惑うものの、国を思う気持ちから引き受け、次第に重臣たちや使用人たちに信頼されるようになった。
信頼できる者たちには自らの正体を明かし、宮廷内にはヴァイオラの味方が増えていく。
一方、ヴァイオラの婚約者だった辺境伯令息は、実は男性しか愛せない人物だった。ヴァイオラは父が寝込んでいる隙に、兄の振りをして辺境伯領へ出かけ、婚約を破棄する。
宮廷魔法医の尽力により、皇帝は一時的に酔いから醒めた。ヴァイオラが勝手に婚約破棄したことを知った皇帝は怒り、罰として彼女を戦地に送ることを決定する。
しかし気丈なヴァイオラは、父の始めた戦を終わらせる好機ととらえた。彼女は知略と人心掌握力を駆使し、和平を結ぶことに成功する。
現地で指揮を執っていた将軍も内心は侵略戦争に反対していたため、ヴァイオラに心酔する。
だがヴァイオラの留守中、帝国の斥候により、ミシェルが実は王子であり、かつ当初の目的が皇太子の暗殺だったと暴かれる。皇帝はミシェルを地下牢に幽閉し、処刑を命じた。
帝都からの急報を受けたヴァイオラは、すべてを投げ打ち、馬を駆って宮殿へと疾走する。愛する人を救うために──。
これは、父に虐げられていた皇女が女装王子に愛されて、暴君を倒すために女帝となるまでの物語である。