買取店「Valoria」のエース鑑定士、ハル。彼が持つ、モノの真価を見抜く完璧な「目」は、ある日、呪われた力へと変わった。
彼が本物だと鑑定した数百万のアンティークウォッチが、巧妙に偽装された盗品だったのだ。会社に莫大な損害を与え、信頼を失ったハル。彼の「正しすぎた鑑定眼」は、人の悪意を見抜けず、彼自身を深い絶望の淵へと突き落とした。
「この目さえなければ……」
自分の能力を呪い、鑑定士としての自信を完全に失った彼が、最後の希望として見出したのが、最新のVRMMO《ファンタジア・オンライン》だった。
現実の人間関係から切り離された世界で、誰にも迷惑をかけずに、もう一度自分の「目」が正しいのかを試すための、静かなリハビリ。それが彼の目的だった。
戦闘ではなく、生産を。王道ではなく、誰もが見向きもしない「ガラクタ」の山を。ハルは、現実で培った鑑定眼だけを武器に、この仮想世界で自分自身の価値を取り戻すための、孤独な戦いを始める。
しかし、彼の知らないところで、物語はすでに動き出していた。現実では、伝説の鑑定士である師匠との再会と、刑事の影。ゲームでは、彼の特異な才能に気づく、氷の商人サクラ。そして、彼のすべてを見通すかのような、謎のメッセージ。
これは、価値を「見る」ことしかできなかった男が、現実と仮想、二つの戦場を通して、価値を「創る」人間へと至る、再起の物語である。