会社の帰りに、男はぼうっと月を眺めていた。
最期の月を。
すると神だか悪魔だか分からないヤツが現れてこう言った。
「お前の願いを叶えてやろう」
願いの中身も言わずに。
男はそして、銃だけを渡され、滅んだ世界に置き去りにされた。
人はいない。
代わりに、かつて人だったものが怪物となって襲ってくる。
男は命を奪う。
はじめは仕方なく。
やがては自発的に。
そして男は気づくのだ。
そう。
自分はヒーローになりたかったのだ、と。
真のヒーローである必要はない。
自分より弱くて醜い存在を、ただ殺し続けるだけでいい。
いや、足りない。
もしそこが真の理想郷だというのなら、ヒーローを言祝ぐ愚民と、美しいトロフィーとしてのヒロインが不可欠であろう。
ああ、神よ。いや悪魔でもいい。お前は英雄譚を知らないのか。この俺のためにもっと都合のいい舞台装置を用意したらどうなんだ。ぜんぜん足りていない。心は渇き続けている。