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取得日時> 2023-06-26 00:10:12
奪ったのではありません、お姉様が捨てたのです
『ローラは私のものを奪ってばかり――もう私のものはすべてローラに譲ります。ここに私の居場所はない。どうか探さないでください』
 ある日そう書かれた手紙を置いて義姉クリスティーナは消えた。
 高い魔力を持ち、聖女となった義姉は王太子レガート殿下の婚約者となり、その立場から学院でも生徒会副会長を務めていた。
 一見して清廉で有能、真面目に見える義姉。何も知らない人が手紙を読めば、元平民でふわふわにこにこのお花畑に見える私ローラがすべて奪ったのだと文字通りに受け止めるだろう。
 だが実情は違う。『真面目』が必ずしも人々に恩恵を与えるものではなく、かつ、義姉のは真面目というよりも別の言葉のほうが正確に言い表せる。
 
 だから。 
 国の守りを固めていた聖女がいなくなり、次期王太子妃がいなくなり、生徒会副会長がいなくなれば騒然となる――はずであるが、そうはならなかった。
 義姉の本性をわかっていて備えないわけがないのだ。
 この国は姉がいなくても揺らぐことなどない。
 ――こんなはずじゃなかった? いえいえ。当然の帰結ですわ、お義姉様。
 
 あとはレガート殿下の婚約者だけれど、そこは私に手伝えることはない。
 だから役割を終えたら平民に戻ろうと思っていたのに、レガート殿下は私よりもさらに万全に準備を整えていたようで――
 私が王太子の婚約者?
 いやいやそれはさすがに元平民には荷が重い。
 しかし義姉がやらかした手前断ることもできず、王太子なのに鍛えすぎなレガート殿下は武骨ながらもやさしい寵愛を私に注いでくるように。
 さらには母の形見の指輪をはめてからというもの、やけにリアルな夢を見るようになり、そこで会う殿下は野獣み溢れるほどに溺愛してくる。
 武骨ってなんぞ?
 甘すぎて耐えられる気がしないんですけど。
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アルファポリス様にも掲載しております。

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