魔王ヴァルゼン──史上最凶と恐れられるその名を聞いて、勇者エルヴィンは覚悟を決めた。
だが本人は、配下のゴブリンにすら舐められる最弱の魔王だった。
大戦終結後の混乱で成り行きから勇者パーティに加わったヴァルゼンは、あるジレンマを抱えていた。「実は最弱です」と言いたい。だが勇者たちの期待に満ちた目が怖すぎて言えない。
逃げ腰を「戦略的撤退」と称賛され、怯えた目を「敵を値踏みする冷徹な眼光」と畏怖され、敵に命乞いしようとしたら「交渉で屈服させた」と伝説になる。
誤解は止まらない。国を超え、種族を超え、神々にまで届く。
そして世界の裏側から、誤解だけでは済まない「本物の脅威」が目を覚まし始めていた。
最弱の魔王は、最強の誤解に背中を押されて世界を救えるのか?