三歳の娘が、家から消えた。事件でも事故でもない。文字どおり、消えた。
数ヶ月後、俺と妻はあの子が渡った先にたどり着いた。異世界だった。
こちらの数ヶ月が、あちらの五年にあたることは、誰も教えてくれなかった。
俺が探していたのは、三歳の娘だ。村のどこにもいない。
見つけたのは、娘のほうだった。
「……おとうさん?」
八歳になっていた。
持ってきた上着は、あの子の腕の半分にも届かなかった。
帰り道は無い。ならば、ここで暮らしを立て直すだけだ。
娘が見せてくれたのは、戦うための魔法ではなかった。
水を出し、火を熾し、傷んだものを保つ。暮らしを少しだけ良くする、地味な魔法だ。
失った五年は戻らない。だから、これからの一日は一つも渡さない。
やがて世界が、娘の力を欲しがる日が来る。そのときは、俺が前に立つ。